【書評】知的生産の技術(一読目)

知的生産の技術 (岩波新書)知的生産の技術 (岩波新書)
梅棹 忠夫

岩波書店 1969-07-21
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インプットはアウトプットのためにある。
本書を読み、それを一番感じました。
例えばメモについて、こんな記述があります。

じっさいにどれだけをあとから利用するかは別としても、すくなくとも利用の方法だけは確立しておかなければならない。

インプットを行う段階から、その情報をどう扱い、利用するのかを見据えておく必要があるということです。

Evernote

この言葉から、真っ先にEvernoteが思い浮かびました。
Evernoteには、自由に様々なことを記憶させることができます。思い出、思いつきのアイデアライフログ…。使う人によって自由自在です。ただ、その記憶を生かすも殺すも自分次第。生かすためには、記憶させた情報の利用の方法を確立しておく必要があります。

規格化、整理

知的生産の技術のひとつの要点は、できるだけ障害物をとりのぞいてなめらかな水路をつくることによって、日常の知的活動にともなう情緒的乱流をとりのぞくことだといっていいだろう。精神の層流状態を確保する技術だといってもいい。努力によってえられるものは、精神の安静なのである。

障害物を取り除き方として本書で挙げられるのが、情報の「規格化」と「整理」です。
インプットした情報を、規格化・整理することにより、アウトプットまでの煩わしい雑多なことを排除し、インからアウトまでをスムーズに流れるようにする。快適な環境は、知的生産には欠かせません。

■一つの例示

規格化と整理が、精神の安静を生み出す。
これを聞いて、思い浮かぶ整理法が一つあります。GTDです。
GTDでは、収集により頭を空っぽにすることが快適さを生みます。それに加え、収集から実行までの一連の流れが、フローチャートによって規格化されていることも、GTDがストレスフリーを生み出す所以ではないでしょうか。
このように、著者が語る考察の一つ一つが、現在好んで使用されているツールとの親和性の高さを感じさせます。本書が40年以上も前に執筆されたものであることが、驚きの限りです。

知的生産を行ううえで

著者は本書で、長年著者自身が培ってきた知的生産に対する考えと、知識を獲得し、情報を生み出す技術を伝えてくれます。本書であげられる方法を実践してみることで、自分の脳みその違った一面を垣間見ることができることと思います。
ただ、忘れてはいけないことがあります。

創造的な知的生産を行うための実践的技術についての提案を試みる

そうです。本書で述べられるいくつかの方法は、あくまでも知的生産を行うための「提案」なのです。

知的生産の技術について、いちばんかんじんな点はなにかといえば、おそらくは、それについて、いろいろとかんがえてみること、そして、それを実行してみることだろう。たえざる自己改革と自己訓練が必要なのである。

まとめ

現代は、情報過多と言われる時代です。あらゆる情報の吸収が求められます。とはいえ、「アウトプット」に必要ない、自分が利用することができない情報までを、記憶・記録し、吸収する必要があるのかなと、ぼく自身は思っていました。そんなものまでいちいち吸収していたら、混乱してしまうだけではないか、と。しかし、本書を読んで考えを改めたいと思います。情報についていちばん気を配るべきは、「これは利用できるか」ではなく、「如何に利用できる状態にするか」であると。