アイデア作成の原理と方法【書評】アイデアのつくり方

アイデアのつくり方アイデアのつくり方
ジェームス W.ヤング 竹内 均

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「アイデアをつくる」とはどういう事か

本書ではアイデアをつくるためには、「五つの段階を経過してはたらく」と言われます。その五つの段階を見てみると、

第一 資料集め—諸君の課題のための資料と一般的知識の貯蔵をたえず豊富にすることから生まれる資料と。
第二 諸君の心の中でこれらの資料に手を加えること。
第三 孵化段階。そこでは諸君は意識の外で何かが自分で組み合わせの仕事をやるのにまかせる。
第四 アイデアの実際上の誕生。<ユーレカ!分かった!みつけた!>という段階。そして
第五 現実の有用性に合致させるために最終的にアイデアを具体化し、展開させる段階。

第一の段階はまさにインプットと呼べる物で、第四・第五の段階はアウトプットに相当します。そしてこの五つの段階についてこう書かれます。

大切なことはこれら五つの段階の慣例性を認め、この五つの段階を私たちの心は一定の順序で通り抜けるという事実—本当にアイデアを作成したいのなら、この五つのどの段階にもそれに選考する段階が完了するまでは入っていけないという事実—を把握することである。

つまりは、「アイデアのつくり方」とは、「インプットをアウトプットにつなげる方法」であると言えます。どのような情報を収集し、それをどう扱い、アイデアにつなげていくのか。その一部始終について書かれているのが、本書です。
「どのよう"な"情報を収集するのか」からもう一歩踏み込んで、ネットが普及した現代において「どのよう"に"情報を収集するのか」について触れられているのが、以前紹介した「EVERNOTE「超」知的生産術」です。
Evernoteの多様性と可能性【書評】EVERNOTE「超」知的生産術(一読目)

EVERNOTE「超」知的生産術EVERNOTE「超」知的生産術
倉下忠憲

シーアンドアール研究所 2011-02-26
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イデアとはなにか

そもそものアイデアについては、こう定義されます。

・アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない
・既存の要素を新しい一つの組み合わせに導く才能は、事物の関連性をみつけ出す才能に依存するところが大きい

そして

事実と事実の間の関連性を探ろうとする心の習性がアイデア作成には最も大切

関係性を見出す力こそ、アイデアを生み出すためには不可欠です。

■事物の関連性をみつけ出す才能

才能と書かれてはいますが、この「事物の関連性をみつけ出す才能」は鍛える事ができるとも述べられています。
その鍛え方の一つとしてぼくが真っ先に思い浮かぶのが「数学」です。
数学では、一見つながりが見えない分野どうしでも大いに関連しています。そのつながりをリンクさせる力を養うのも、数学を学ぶ一つの目的であると言えます。
本書においても、最後の竹内均さんの解説の部分で、こんな言葉が取り上げられています。

ポアンカレは豊かなアイデアにたどり着くのに必要なのは美的直感であると述べている。その美的直感をさらに分析して、ポアンカレは「これまでは無関係と思われていたものの間に関係があることを発見することが美的直感である」と言っている。

ポアンカレとは、百年近く未解決問題であった「ポアンカレ予想」を提出したことでも有名な数学者です。美的直感とはまさに「事物の関連性をみつけ出す才能」です。
物事がリンクする瞬間は何とも言えない快感をともないます。数学を学んでいてもこの快感は味わう事ができます。それが数学を楽しく学ぶ一つの理由であったりします。
十人十色の数学 ー数学好きの「みんな数学やってみようよ!」な話 No.01ー

おわりに

この本が日本語に初めて訳されたのが50年前。そしてこの原著の初版は1940年に出ているという事で、この事実には大きな驚きを覚えます。その内容については、古くさいなんてことは一切なく、多くの示唆を与えてくれます。巡り会うことができてよかったと思わせてくれる1冊です。
では、お読みいただきありがとうございました。