「数学のどんなところが好きですか?」という質問に対する、数学者のお答え

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先日、大学・大学院時代にお世話になった先生にお会いして来ました。卒業後もおつきあいをさせて頂き、たまに飲みに連れていってもらっております。かれこれ5年ほどの付き合いになるのですが、先日お会いした時にある質問をはじめてしました。
「数学のどんなところが好きですか?」
という質問です。数学者である先生に、一度聞いてみたかったことです。先生にとって趣味であり職業でもある数学。どんなところに惹かれ、没頭しているのかすごく興味がありました。

数学の”良いところ”

「好きというか、数学の良いところは…」と前置きされて、2つの答えが返ってきました。
  • 解が一つに定まり、それが覆ることはない
  • 正しい証明は時代を超える
この2つの事実が、すごく自分を納得させてくれる、とおっしゃっていました。
■解が一つに定まる
数学はよく山登りに例えられます。頂上は一つでも、そこに至るまでのルートはいくつもある。数学も同じで、行き着く証明は同じでも、その証明の仕方はいく通りも存在します。これは他教科にはない、数学の特徴的な部分です。
それに加えて先生は、「解は覆らない」ということも良いところで、むしろそちらを強調されていました。
■覆らない
歴史では、新たな事実が出てくる事によって、それまでの通説が覆ることはよくあります。また、国語で、「このときの作者の心情を答えなさい」と聞かれ「悲しみを表現している」という答えが一般だとしても、作者自身が「いや、これは実は喜びを表してるんだよね」と言えばそれでおしまいです。実のところ、作者の心情がわかるのはその作者自身しかいません。
しかし、数学においては正しい証明は覆ることはありません。それゆえに、時代を超えて存在し続けます。

「好きなもんは好き」

上にあげた2つの答えは、あくまでも先生が思う数学の”良いところ”です。本題の、なぜ好きなのかの理由にはこんな答えが返ってきました。
「好きなもんは好き」
とても印象的な答えでした。
■数学者の言葉
数学では、定義にのっとって論理的に物事を組み立てて行くき、新たな事実を導き出して行く、論理を突き詰めた学問です。理系の人は理屈っぽいと言われますが、数学者はその最たるものでしょう。そんな先生が、理屈抜きにして「好きなものは好き」とおっしゃっているのを聞いて、確かにそういうもので、好きに理屈なんていらないな、と改めて感じました。

「数学を好きな人が、数学を教えて欲しい」

そして最後におっしゃっていたのが、「数学を好きな人が、数学を教えて欲しい」ということ。「数学が好き」は、数学を教える者になるための最低限持ち合わせておかなければいけないもの。でないと数学の楽しさ、おもしろさなんて伝えることができないと思っています。
数学の必要性よりも、有益性よりも、おもしろいと感じることを伝える。数学を教える方それぞれが、自分の中に数学の魅力を持ち、伝えていくことで、嫌われ者の数学が少しずつ人気を取り戻すと思のんです。数学のどんなところを魅力的に思うのか、楽しいと思うのか。それは個々で違っていいこと。むしろ違ったほうが、学ぶ者も多種多様な数学の魅力を感じることができる。そのなかで一つでも心に響けば、数学を教える者としては万々歳です。

おわりに

先生は大学で自分の研究分野の数学を追求しながら、学生には10年先を見据えた指導をしておられます。先生の教える学生のほとんどが教員になるので、大学にて確かな数学の力をつけることに尽力されてます。そんな先生の教えを受けた一人として、10年後、胸を張って数学を教えていたい。そのために努力あるのみです。
では、お読みいただきありがとうございました。

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