生活に隠された数学の考え方の数々〜「とんでもなく役に立つ数学」を読んで学んだこと〜

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他の分野にも使えることができる数学の考え方。これこそ数学を学んで身につけてほしいものだと、個人的に思っています。将来数学を使うようになるなんてなかなかありません。それでも数学が主要な教科の一つに位置づけられているのは、数学を学ぶことで身に付く力は数学に関係のない、数式の出てこない他の分野でも大きな力になり得るからです。

数学においては計算や記号も大事だけれど、そうした記号に埋没しないで考え方を学ぶほうがもっと大事です。
「数学は何に使えるのか?」よりも、「数学で得た力、考え方は何に使えるか?」にフォーカスを当てるべきだと思います。本書を読んで学んだ「数学で得ることのできる考え方」を3つ紹介します。

だまされにくくなる

数学で大切なのは、一つの事柄に対して「ほんとうにそうなのか?なぜそうなのか?」を自分が納得できるまで自問する行為にあります。ただ単に解法を暗記するのではなく、論理の展開を一つ一つ理解し、可能ならば説明できるまで深く理解することが重要です。
数学者は用心深いと言ったけれど、だまされにくくなるというのは、数学のメリットのひとつです。
数学者の用心深さというのは、そういった部分からきてるのでしょう。

結論には必ず”仮定”があります。
みなさんに伝えたいのは、そういった仮定を見ないで、結論だけを飲み込んでしまうのは危ないということです。
ただ「2100年までには、地球の平均気温は4℃上昇するでしょう」という結論だけみて「そうなんだ」と鵜呑みにせず、どんな仮定のもとその主張がされているのか、そしてその主張が「ほんとうにそうなのか?なぜそうなのか?」考えてみる姿勢が大切で、それこそ数学を学ぶことで身につけられることの一つです。「なんか怪しいな?ほんとにそうなのかな?」という自分の中に芽生えるちょっとした違和感や疑問を無視せず、目を向けることのできる力です。

論理あそび

本書ではこんな遊びが紹介されています。
ひとつずつ小さな紙をたくさん配るので、そこになるべく関係のない短い文章を書いてください。本当になんでもいい。

「お腹がすいた」とか「かわいい犬を見た」とか。それを集めて、みなさんに2枚ずつ引いてもらいます。そして、その2枚を無理やりつないでストーリーをつくってください。
簡単なゲームですが、これはなかなかおもしろそうで興味深い。

選んだ二つの文章には選んだ時点では何の関係性もありません。その二つの間を自分で自由に考えて補っていく。つまりは二つ”つなげる”トレーニングです。まったく関係のない文章をつなげるには、一つの展開では難しく、いくつか組み合わせる必要も出てきます。こんな風に。
「休んだ」と「猫がいた」です。道ばたに猫がいて、とても可愛らしいので家に連れ帰った。その後、一緒にじゃれているうちに時間を忘れ、次の日は仕事があったけれど休んだ。
二つの文章をつなげるために間の部分を考えていくつかの展開を積み重ねていく。数学でもこの”組み立ててつなげる”ということがとても重要です。仮定と結論をつなげるときにも、同じようなことをするんですから。
ふたつの概念をどれだけ論理的に精密につなげられるか。これが数学力の向上に最も効くと言ってもいい。
上に紹介したトレーニングと、数学との相違点は、間の展開を”言葉で表現”するか”数式で表現”するかの違いです。実生活では言葉を使いますが、論理の展開は数学で学ぶことができるということですね。

妥協点をみつける

「お金」と「贅沢」は、限られた収入の中で生活するぼくにとって悩ましい問題です。「お金」を貯めるためには「贅沢」を我慢しなければなりませんし、「贅沢」に過ごして満足感を得たならば代わりに「お金」はなくなってしまいます。
どちらかをすればもう一方は不利になり、両方とも取り組むのが難しいとき、その二つは「トレードオフの関係にある」と言います。
「こっちをたてればあっちがたたず、あちをたてればこっちがたたず」的な状況って日常茶飯事です。こんな二つの妥協点を探る道具として数学が使えたりするんですね。経済学で登場するやつです。

で、高校数学でよくやった「2つのグラフの交点を求める」という問題、これの応用例がまさに”妥協点をみつけること”です。ここでじっくりと説明することはできませんが、実際に学ぶと数学の問題をただただ解くだけでは感じることのできない実用性を体感できる部分だと思います。

おわりに

学校で数学を学ぶだけでは感じることのできない”実用性”というのは山ほどあります。実際に数学は至る所で利用されていますし、数学を学ぶことで身に付く考え方も実はいろんなシーンで活躍しています。でもそれはなかなか目には見えません。そこをどう学ぶ方に見えるようにしていくのか。これは数学を教えていく者の大きな課題ではないかなと思っています。本書を読むことで、ちょっとその実際に活躍する数学の考え方のいくつかを知ることができるかもしれません。

では、お読みいただきありがとうございました。


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