”嫌子”による指導がはびこるわけ〜「行動分析学マネジメント」を読んで学んだこと〜
IMG_1063 by choiyaki
人に対して何かを教えたり、指導する立場にあるとき、どのようにしているでしょうか。
良い行いは「褒める」。改善すべき行いに対しては、「叱る」。基本はこの二つかな、と思います。そして、気をつけなければ、人は叱りがちになる、ということを本書から学ぶことができました。
「褒められた」とき。「叱られた」とき。
ある行動を褒めると、またその行動をとろうとします。それは、褒められるのがうれしいから。
褒めることに限らず、ある行動を取ると、自分にとって嬉しことが起こるとわかると、人はまたその行動をとろうとします。会話の中で、相手がよくうなずき、相槌をうってくれると、それが嬉しくてどんどん話したくなります。
反対に、ある行動に対して、お叱りを受けると、次からはその行動をとらないでおこうとします。叱られることに限らず、ある行動を取ると、自分にとって嫌なことが起こるとわかると、人はその行動を控えるようになります。定時に帰る支度を始めるたびに、白い目で見られると、それが嫌で定時に帰ることを控えるようになります。
人は(人に限らず、ですが)こんな風に、ある行動の直後に何が起こるのかによって、その行動が増加したり、減少したりします。
ある行動が増えるのか減るのかは、直後に自分にとって嬉しいことが起こるのか、嫌なことが起こるのかに支配されている、というわけです。このように、行動を増加させる”嬉しいこと”を「好子」、行動を減少させる”嫌なこと”を「嫌子」と言います。
嫌子による指導がはびこるわけ
好子や嫌子は、行動の直後であればあるほど、行動の増減に影響を及ぼします。
例えば、チョコを口に放り込むと、その瞬間甘く、美味しいひと時を味わうことができます。口に入れた瞬間に嬉しいことが起こるので、そりゃあまたチョコを食べたくなるわけです。
60秒ルール、というものが行動分析学にはあり、60秒以内に嬉しいことまたは嫌なことが起こると、行動の増減に影響を及ぼしやすいのだそうです。
だいぶ後で嬉しいことが起こるよりも、すぐに起こった方が、行動が増えやすい。
では、ここで、自分が指導者になったと仮定します。そのあなたの前で、ある問題のある行動が起こったとします。そのときに、「なにをしているんだ!」と叱ったとしましょう。そうすると、その問題行動はストップします。つまり、叱ることによって、問題のある行動がなくなるという嬉しいことが起こる。好子を得ることができる。好子を得るということは、その直前の「叱る」という行動が増えることにつながります。
対して、叱られた方からすると「叱られる」というのは、嫌なことー嫌子ーになります。つまり、指導者は、相手に嫌子にを与える指導をすると、すぐに効果があらわれるので、知らず知らずの間に、嫌子による指導が増えていくことになりかねないわけです。
嫌子による指導の問題点
「問題のある行動がやむのであれば、それでいいじゃないか」と思うかもしれません。ですが、嫌子による指導には、いくつもの問題点があるんです。
まず、なんども繰り返し嫌子によって指導されると、耐性がつきます。「怒られ慣れ」るわけです。そのうち、嫌子を与えられても、問題のある行動をやめない、なんてことになっていきます。
嫌子を与える人を避けるようにもなります。当然です。嫌子、嫌なことを与えてくる人を避ければ、嫌なことから逃れられるのですから。
「あかん!」「なにをしているんだ!」と嫌子による指導を受けると、行動が全般的に抑制されることにもなります。何かやろうとしていても、「また怒られるんじゃないか」と感じると、やりたくなくなりますものね。
一時的な効果しかないのも、嫌子による指導の特徴です。問題のある行動をやめさせるだけで、行動の改善のための手をまったく打っていないわけなので。
とは言え、やめさせなければいけない行動に対しては、嫌子による指導が必要になってきます。気をつけなければいけないのは、そればかりにならないようにしなければいけない、ということです。
おわりに
行動分析学は、いろんなところに応用されてきています。実際、本書とあと数冊読み、行動分析学を学んだだけですが、ぜひ活かしていきたいと思うものが多く、もう少し深く学んでみたいな、という気持ちが湧きました。
特に、嫌子による指導のタイミングは、慎重になりつつ、でも叱るときははっきり叱る。そういうメリハリが大切だな、と感じます。普段から、より意識していかないといけないな。
では、お読みいただきありがとうございました。
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→あれやこれやの数学講義
- 行動分析学
- 人間が行う行動にはそれをさせる原因があり、その原因を解明し、行動に関する法則を見出そうとする科学
- 「死人にはできないこと」が行動の定義
- 好子と嫌子
- 好子
- 行動の直後に出現すると行動を増やす刺激やできごと
- 会話の中での、うなずき
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- ごほうび的なもの
- 行動の直後に出現すると行動を増やす刺激やできごと
- 嫌子
- 行動の直後に出現すると行動を減らすできごと
- 叱られる、罰を受けるなど
- 睨んでいない→定時に帰る準備をする→睨まれる
- 「定時に帰る」という行動の減少に
- 行動の直後に出現すると行動を減らすできごと
- 好子
- 嫌子による指導の問題点
- 耐性がつく
- 嫌子を与える人間を避けるようになる
- 行動が全般的に抑制される
- その場面に適切な行動を何も教えていない
- 一時的な効果しかない
- 嫌子による指導がはびこるわけ