行動の原因を知る術【書評】人は、なぜ約束の時間に遅れるのか

20110703091856
傘を置き忘れるのはただの不注意。マナーの低下は道徳観が失われていっているから。約束の時間に遅れるのはだらしない性格だから。
こんな風に「注意力」や「道徳観」や「性格」という便利な言葉で片付けてしまってはいませんか?結論づけてしまってはそこで思考停止に陥ってしまいます。
本書は、簡単な言葉で片付けがちなことを「行動分析学」を用いて、「人は、なぜそのような行動をとるようになるのか」考える術を与えてくれる1冊です。

行動分析学

行動分析学では、行動の起こる原因を「行動と環境の関係」に求めます。
■「扇風機をつける」という行動
たとえばこの暑い時期、よく扇風機をつけます。その行動が起こる原因を、行動分析学ではこんな風にみていくんです。
暑いと感じる(先行事象といいます)
→扇風機をつける(行動)
→涼しくなる(後続事象といいます)
まずはある行動が誘発されるきっかけがあり(先行事象)、行動を起こし、行動の結果どうなるのか(後続事象)。
扇風機をつければ涼しくなるという”嬉しいこと”がおこるので、「暑いと感じる→扇風機をつける」という行動はまた繰り返されます。これを「強化」といいます。
仮に、暑いときにストーブをつけるとすると、
暑いと感じる
→ストーブをつける
→より暑くなる
と、”嬉しくないこと”が起こってしまうので、この行動をとることはなくなっていきます。
実際は先行事象、後続事象をたくさん挙げていき、行動が起こる原因を考えていきます。

「考える」は強化できるのか?

そこで、ぼくの興味は一点に絞られます。「考える」という行動を強化することはできるのか、です。
■数学で考える力を
ぼくは子どもたちには楽しく数学を学んでもらい、考える力をつけて行って欲しいと思っています。この「考える力」というのは、物事を論理だてて考えることを指すのですが、それだけでなく「考える」ということを日常的に行えるようになって欲しいとも思っています。誰かが提示する情報や答えを鵜呑みにするのではなく、一度自分で考えてみる。そういうことをして欲しいんです。
「考える」を強化することができるのであれば、この行動分析学が数学で考える力をつけてもらうヒントになると思ったんです。
■思考も行動である
結論から言うと本書では「強化できる」と言われています。思考も行動である、と。
確かにぼくも思い当たる節があります。それは「部分強化」という強化のされ方についてです。
ちなみに、行動が維持されるためには、毎回強化されなくてもいい。一度身についた行動は、時々強化されるだけでも維持される。これを『部分強化』という。
何かについて考えたとしても、結論や明確な答え、アイデアが浮かぶとは限りません。モヤモヤしたまま考えるのを中止してしまうこともよくあります。この”モヤモヤ感”というのは、ぼくにとっては”嬉しくないこと”なので、考えるという行動をとらなくなる、はずなのですが、考えを巡らせることをぼくはやめようとしません。
それは「考える」という行動がすでに身についているので、考えた結果アイデアが浮かんだり、答えにたどり着くことがときどきできることで部分強化が起こり、維持されているんだと思います。

「考える」を強化する

思考も行動であるので、強化することができる。「考える」きっかけとなる先行事象と、「考える」を強化する後続事象を適切に設定することができれば、「考える」を身につけさせることができるはず。数学を用いて実現させたい。
■実践あるのみ
これには実践の場での経験が必要です。どうすれば考えるきっかけを与えることができ、どのように考えることを強化していけばいいのか、子どもの反応をみながら考えていくしかありません。意識して取り組み、記録をしっかりとっていくのみです。

おわりに

人の行動はもっと複雑で、原因なんていっぱいあります。本書でも言われていますが、行動の原因を探るためには開かれた思考状態を維持することが大切で、あらゆる可能性を考え続ける姿勢が必要になって来ます。
ぼくは考えることが大好き(興味のあること限定)なので、考えることを身につけてもらう方法を、考えに考えていきたいと思います。
では、お読みいただきありがとうございました。

Twitterボタン

Add to Google RSS