難しさは、算数>数学?
ぼくは支援学校に勤めており、そこでは算数の内容を教えている。
大学、大学院の6年間数学を学び、その間予備校で高校生に数学を教えていたため、算数を教えることにはまだ慣れていない。それもあると思うが、それ以上に算数教育の難しさは感じる。
"算数>数学?"とは、「教える難しさ」についてである。
難解な算数
数学(ここでは高校数学のこと)の方が、内容的には扱う概念が多く、定義や定理が入り乱れており難しい。
ではなぜ教える難しさは算数のほうが勝るのか。
それには、二つの理由が挙げられる。
- 扱う内容が四則演算
- 教える対象が小学生
この二つがダブルパンチで襲ってくる。
■扱う内容が四則演算
算数では生活に根ざした数についての四則演算の習熟を目的としている。この四則演算がなかなかもって教えるのは難しい。
それは、「なぜ?」と聞かれて「うっ…」となる内容がおおくを占めているから。
例えば、「1+1=2はなぜ?」「分数のわり算で、分母と分子をひっくり返すのはなぜ?」「小数ってなに?」等々。
それらをどうにか理解してもらうわけだが、そこでさらに難易度を上げているのが、相手が小学生ということ。
■教える対象が小学生
小学生の思考力はまだまだ未熟だ。解説の際に理屈を長く連ねても、途中で頭がこんがらがってしまうことも少なくない。
また、未熟だというのは言い換えるとまっさらだということ。ここに一つの難しさが潜んでいる。
「1.三両の電車と二両の電車をあわせると、電車は何両になるでしょう?」
「2.三両の赤い電車と二両の青い電車をあわせると、電車は何両になるでしょう?」
という二つの問題。大半の方は「どっちも同じやん」と感じるだろう。しかし、まっさらな子どもたちにとっては、違う。
1.の問題では五両と答えることができる子も、2.の答えを「赤い電車三両と、青い電車二両」とする子が出てくる。それは、まっさらがゆえに、赤い電車と青い電車を同じ「電車」という集合で捉えることをまだ学んでいないことが原因だが、もうすでに当たり前のこととして捉えている大人にとっては、「なぜわからないのか」に陥りがちになる。そこを解説するのも、なかなか難しい。
固い頭をやわらかくする
以上が算数教育の難しさだが、この二つとも、教える者にとっては大きなチャンスになる。
質問をされて「うっ…」となるということは、そこの内容を教える者自身が内容をしっかり理解していなかったということ。それを子どもが教えてくれたということ。計算の「やり方」だけを教えてごまかすことなく、自分がもう一度理解し直すことができれば、一つ成長する事ができる。
また、「なぜわからないのか」と思ったときも、自分では「なぜ?」と思わないところまで子どもが問題の細かい部分まで目を向け、分解してくれたということ。つまり自分では持てていなかった視点を、子どもが与えてくれたということ。これもまた、成長を後押ししてくれる。