ちょっとした数学〜帽子の色がわかっちゃう不思議〜
赤と白の帽子があります。目をつぶっているときに帽子をかぶせられると、目を開けたとしてもかぶっている帽子が何色なのかはわかりませんよね。でも、何人かが集まってみると自分のかぶっている帽子の色がわかっちゃう。そんな不思議なお話です。
今回は結構しっかり頭を使ってみてください。
子どもたちがいます。そのうちの何人かは赤い帽子を、残りは白い帽子をかぶっています。みんな自分のかぶっている帽子の色はわかりません。ほんとにそんなことが起こるのか、少し疑わしく思ってしまいますよね。
今、「1分間に一度ベルを鳴らします。自分のかぶっている帽子の色がわかった時点で手を挙げてください。ただし、赤い帽子、白い帽子は必ず一人はかぶっています。」と指示を出し、ベルを鳴らして行くと、何回目かで数人が一斉に手をあげました。さて、どんな人が手を挙げたのでしょう?
当然、自分以外の人の帽子の色は全て見ることができるとします。
ベルを鳴らすだけで色がわかる?
一斉に手を挙げるだって?
なぜそんなことが?
よければ少し考えてみてください。
ヒントっぽいもの
■帽子をかぶっている子の気持ちになる
実際に自分がその場にいて、自分の帽子の色を推測する立場に立ってみてください。■問題を単純化する
問題では"何人か"とか"数人が"という風に具体的な数字が与えられていません。数字を具体的に設定しないでのでは考えていきにくい。なら具体的に自分で人数を設定してみてください。赤い帽子の人数と白い帽子の人数をあれやこれやと設定しながら思考錯誤してみることから見えてくるものがあるはずです。■文章から得られる情報を見逃さない
この問題で結構大事なのが、"ただし、赤い帽子、白い帽子は必ず一人はかぶっています。"ということを、子どもたちが知っているという事実です。実際、この一文があるからこそ、子どもたちは自分の帽子の色を判断することができてしまうんです。単純化したものを考えてみる
こっからは解説に入っていきたいと思います。問題を少ない人数に設定しなおして考えてみます。
■全員で3人。赤が1人、白が2人のとき
ヒントっぽいものを踏まえて、少し考えてみてください。ーーーーー
赤い帽子をかぶっている人の気持ちになってみると、自分以外の2人は全員白をかぶっています。かつ、”赤い帽子、白い帽子は必ず一人はかぶっている”。ということは、自分が赤だと判断できます。白だと全員が白い帽子となり、”赤い帽子、白い帽子は必ず一人はかぶっている”ということに反してしまいますもんね。ということで、一回目のベルで手を挙げることができます。
一方白い帽子をかぶっている人の気持ちになってみると、自分以外うち、1人は赤を、1人は白をかぶっています。この状況では自分がどちらの色か判断をすることができませんね。一回目のベルでは手を挙げることはできません。
よって、「一回目で、赤の帽子をかぶった1人が手を上げる」ということがわかります。
■全員で5人、赤が2人、白が3人のとき
これもヒントっぽいものを踏まえて、少し考えてみていただければ幸いです。ーーーーー
赤い帽子をかぶっている人の気持ちになってみると、自分以外のうち、1人は赤を、残りの3人は白をかぶっています。これでは自分がどちらの色か判断できませんので、一回目のベルで手を挙げることはできません。そしてベルが鳴る前にこんな推測をするでしょう。「もし自分が白であれば、5人の中で赤の人は1人だけ、ということになる。1人だけなら一回目のベルで赤の人が手を挙げるはず。よって一回目のベルで誰も手を挙げないならば、自分は白ではない、つまり赤であると判断できるな。」と。そして赤い帽子をかぶっている人は2人ともこのように考えているはずです。
一方、白い帽子をかぶっている人の気持ちになってみると、自分以外に白2人、赤2人いるので、こちらも一回目のベルでは手を挙げることはできません。
よってこの状況で一回目のベルが鳴ったとしても、手を挙げる人は誰もいませんね。一回目のベルで誰も手を挙げないならば赤の2人は”自分は赤である!”と判断できます。よって自分のかぶる帽子の色がわかるので、「二回目のベルが鳴ると赤い帽子をかぶった2人が一斉に手を挙げる」ということになります。
これは全体の人数が7人や9人、101人と多くなっても、”赤が2人しかいない”状況では「二回目のベルが鳴ると赤い帽子をかぶった2人が一斉に手を挙げる」ことが起こりますね。
■全員で7人、赤が3人、白が4人のとき
少し数を大きくしてみます。考えていくことは上の二つと同じです。ーーーーー
赤い帽子をかぶっている人の気持ちになってみると、自分以外のうち、2人は赤を、残りの4人は白をかぶっています。これでは自分がどちらの色か判断できませんので、一回目のベルで手を挙げることはできません。当然一回目のベルが鳴っても誰も手を挙げることはできません。そして一回目のベルが鳴ったあと、こんな推測をするでしょう。「もし自分が白であれば、7人の中のうち2人が赤となる。赤が2人であれば二回目のベルでその2人が一斉に手を挙げるはず。よって二回目のベルで誰も手を挙げないならば、自分は白ではない、つまり赤であると判断できるな。」と。そして赤い帽子をかぶっている人は3人ともこのように考えているはずです。
一方、白い帽子をかぶっている人の気持ちになってみると、自分以外に白3人、赤3人いるので、こちらも二回目のベルでは手を挙げることはできません。
よってこの状況で二回目のベルが鳴ったとしても、手を挙げる人は誰もいませんね。二回目のベルで誰も手を挙げないならば赤の3人は”自分は赤である!”と判断できます。よって自分のかぶる帽子の色がわかるので、「三回目のベルが鳴ると赤い帽子をかぶった3人が一斉に手を挙げる」ということになります。
。。。お気づきですね?人数が7人に増えても、「全員で5人、赤が2人、白が3人のとき」から鳴るベルの回数が一回増えただけで、考えていることは同じです。少ない赤の人数のかずだけベルが鳴ったとき、赤をかぶっている子どもが全員一斉に手を挙げます。
こたえ
これがもっと大きな、具体的にはわからない数字になっても結果は同じ。よって答えは、「赤か白の少ない方の帽子をかぶった全員が一斉に手を挙げる」です。しっくりこないのであれば、引き続き「全員で9人、赤が4人、白が5人のとき」はどうなるか考えてみてくださればしっくりくるかもしれません。それでもしっくりこなければ、それはぼくの解説がわかりにくいということです。すみません。なにか質問があればぜひお寄せください。
おわりに
おもしろい問題を紹介したつもりなのに、これではなんだか難しい問題をただただ解説しただけみたいになっちゃいました。もっと「おぉ!なるほど!」と思ってもらえるエントリにしたかったのですが。。。うーん、難しいっす。今回は数学の「論理問題」なるものを紹介しましたが、「問題を単純化」したり、「得られる情報を見逃さない」ということは普段からとても大切にすべき観点だと思います。数学を学ぶことによって、実際に活かせる観点・考え方を身につけていってほしいなとそう思います。
ではお読みいただきありがとうございました。
*はじめの問題には間違いがあり、大幅に修正しました。ややこしいことしてすみませんでした。