アウトライナーを使って、考える〜「アウトライン・プロッセッシング入門」を読んで、学び、考えたこと〜

「メモの類は、すべてWorkFlowyにほうり込んでおく」という方針でずーっと管理しています。

あらゆるメモを一つのアウトライン上にずらーっと並べているわけですが、とりわけ”着想”の書かれたメモをどうしていこう?ってのが前回の最後に出てきた疑問でした。

メモ置場としてのアウトライナー - iPhoneと本と数学となんやかんやと

アウトライナーの優れているところは、メモを保管しておく場所としても柔軟であるだけでなく、そのメモたちを眺め、ときに組み合わせ、書き足し、育てていく場所としても、実はとても優れてるんです。

アウトライナーは、”思考のOS”となり、考えることを補助してくれる。

アウトライナーを使って、考える」際のプロセスが、ギュッと凝縮されているのが、今回紹介する、「アウトライン・プロセッシング入門」という本です。

アウトライナーに集めた着想たちを、一つの文章へと仕上げていく際に、すごく参考になる一冊でした。

また、「考える」ことに対する考察も優れており、ぼくは本書からいっぱい刺激をうけました。

シンプルであるがゆえ

「考える」とき、よく使うツールは何でしょうか。手に馴染んでいる道具はなんでしょうか。

ぼくの場合は、「紙とペン」です。授業の内容を考える際も、それをまとめておくのも紙。数学の勉強をする時にも、紙とペンは欠かせません。

頭の中だけで考えるよりも、書きだしたほうがいいってのは、一度やってみると簡単に実感できることでしょう。

「紙とペン」は、ほんとうに多くの人が使っている、多くの人にとって手に馴染んだ道具です。

それは、シンプルであるがゆえ。

”書く”、あるいは”描く”ために必要最低限の道具が、紙とペンだといえます。

必要最低限のシンプルさが、決して”考える”ジャマをせず、”考える”ことを促進してくれます。

すべてのアウトライナーに共通する基本機能があります。それは「アウトライン表示の機能」、「アウトラインを折りたたむ機能」「アウトラインを組み替える機能」の三つです。
シンプルな機能の組み合わせが 、長大な文章や複雑な思考の全体像を把握し 、コントロ ールすることを助けてくれます 。
考えるときに使うツールは、「紙とペン」に限らず、いろいろなものがあります。「アウトライナー」もその一つ。

そして、アウトライナーに備わる機能は、とてもシンプルなもの。アウトラインを表示し、折りたたみ、組み替えるという三つの機能のみ。

複雑すぎないがために、”考える”ときに、いちいちツールの存在を意識せずにすみます。

意識せず自然にできることにこそ意味があるのです 。
複雑すぎず、シンプルであるがゆえに、手に馴染み、手に馴染むからこそ「考える」ことを手助けしてくれる。

考えるときに必要なものって、そんなに多いわけじゃないってことなんでしょう。

「アウトライン・プロセッシング」

そんな、シンプルなアウトライナーを利用して文章を書き、考えることがアウトライン・プロセッシングの定義となります。
アウトライナ ーを 「アウトラインを利用して文章を書き 、考えるためのソフト 」だと定義しておきましょう 。そして 「アウトラインを利用して文章を書き 、考えること 」がアウトライン ・プロセッシングです 。
アウトライン・プロセッシングでは、文章を書くことのみが目的ではありません。文章を書き、考えることが、アウトライン・プロセッシングなわけです。

そして、考えるときに大いに役立つのが、シンプルな道具であるアウトライナーと、そこに蓄積されているメモたち。

ぼくのメモの基本方針は、「完全な文章」で残しておく、ということ。

これは、「知的生産の技術」に書かれていることに倣ってのことです。

まいにちの経験のなかで、なにかの意味でこれはおもしろいとおもった現象を記述するのである.あるいは、自分の着想を記録するのである.それも、心おぼえのために、みじかい単語やフレーズをかいておくというのではなく、ちゃんとした文章でかくのである。
未来の自分はもはや他人であるかもしれないので、メモを文章で残しておかなければ、何を意味していたのかわからなくなってしまうからです。

そして、アウトライン・プロセッシングで扱うのは、文章たち。

メモは文章で書かれているので、当然アウトライン・プロセッシングで扱うものに含めることができます。

書き集めたメモたちを利用し、考え、書く。

そのための優れたツールが、アウトライナーだと言えます。

それは、シンプルであることに加え、文章をとても自由に扱うことができるから。

アウトライナーにメモしたものは、すこぶる自由

ひとつのアウトラインに書き込まれた断片は 、どこにも従属しません 。それ故に圧倒的に自由です 。独立した文章として扱うことも 、文章の一要素として扱うこともできます 。内容は項目をまたがって移動します 。そこに壁はありません 。
文章がアウトライナー上にありさえすれば、どれだけ階層化しても、メモの順序を入れ替えても、それらはいつでも別のところに移動することができます。

あくまでも、「仮のポジション」が決まるだけで、アウトライナー上の文章は、とても自由な存在です。

その自由さが、メモをこねくりまわすのんに向いてる、とぼくは感じています。

順番を組み替えたり、階層化することでグルーピングしたり、それらをいったん壊して再構築したり。

まさに、メモをカードのように操作することができる。

ということは、これまでカードに書き付けていたことを、アウトライナーに書いていこう、となるのは自然な流れなわけで。

一つだけ、ぼく自身難しく感じているのは、自由であるがゆえ、どのタイミングで大きな塊を取り出したらいいのか、なかなかつかめないところ。

アウトライナーでは、一つ一つの細かい文章たちの適切なポジションを考えつつ、全体の内容を把握しつつ、順序を入れ替えつつ、階層化しつつ、文章を書き足しつつ、大きな文章の塊を作り出すことを目的としています。

たくさんの文章の集まりで、大きな塊を作り出すわけですが、一つ一つの文章は、とても自由で、明確に「ここだ!」と定まっていません。

いつでも移動できてしまいます。

となると、なかなか「これで完成だ!」って断言することができない。

ずるずると手を加え続けてしまったりするわけです。

そこで本書で挙げられている、取り出すタイミングの基準が、「階層の深さの安定」と、「本文量のバランス」がとれてくること。

階層の深さが安定し 、本文量のバランスが取れてくると 、アウトラインとして 「完成 」に近いことが多いようです 。シンプルに表現できるということは 、それだけ自分の中での理解が進み 、展開も洗練されてきているということなのでしょう 。
文章たちが、とどまるべきところってのが、ほかの文章たちによって、次第に固められていく。完全に固定はされないものの、「ここおるのがしっくりくる」ってところに落ち着いていく。

そうなると全体のふわふわ感がなくなり、整ってくる。文章たちが落ち着いたときが、大きな塊を取り出すタイミング、というわけです。

おわりに

本書は、アウトライナーという道具を利用して、書くこと、考えることを行うための、教科書になり得る存在だと、ぼくは思います。

重要な概念である「シェイク」について、本エントリではあえて触れませんでした。

それは、「シェイク」の威力を知るのは、実際にアウトライナーを使い始めてからだと思うから。

アウトライナーに備わった機能はシンプルです。

また、アウトライナー上の文章は、任意のポジションに、簡単に移動させることができます。

その二点だけでも、十分に文章を書く際に役立ってくれると思います。

そして、一度アウトライナーを使って実際に文章を作成してみた後、本書を読んでみれば、アウトライナーのもつ懐の深さを、さらに感じること請け合いです。

では、お読みいただきありがとうございました。


FlickrIMG_7907 by choiyaki