分かりやすさと数学と【書評】細野真宏の数学嫌いでも「数学的思考力」が飛躍的に身に付く本!

細野真宏の数学嫌いでも「数学的思考力」が飛躍的に身に付く本!細野真宏の数学嫌いでも「数学的思考力」が飛躍的に身に付く本!
細野 真宏

小学館 2008-09-01
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本書は受験生にもビジネスマンにも有名な、細野真宏さんが、「数学的思考力」の重要性とその身に付け方について書かれた本です。

数学的思考力

「数学的思考力」とはいったいなんなのでしょうか。詳しい解説は本書に委ねますが、まとめると以下のように書かれています。

  • 「数学的思考力」とは、簡単に言うと「物事の仕組みを一つひとつ整理して考えることができる能力」のこと
  • 「数学的思考力」とは、自分のバイアスを取り除くことで的確に情報を"色分け"でき「どこがポイントなのか」を的確に見抜いた上で「仮説」と「検証」によって「本質」を見極められる能力のこと
  • 「数学的思考力」とは、論理性を駆使して、それらの「本質」を繋ぎ合わせることで「情報の基盤」を作れる能力のこと

羅列してしまうと、なんだか難しく感じてしまいますが、そこはさすが細野さん。この「数学的思考力」を、具体例や平易な言葉で噛み砕き、実に分かりやすく解説しています。ただ、その分かりやすさに隠れてしまいがちですが、本書は本当に奥が深いです。「分かりやすさ」についての、著者の懐の深さを感じます。
何故これほどまでに分かりやすく説明できるのか。それは、著者の理解に対する姿勢にあるのかもしれません。

「人にキチンと説明できる」という状態になって、初めて「分かった」と言うことができるのです!
このように、「分かる」というのは「伝えられる」ことと同じである必要があるのです。

自分一人の「分かった」は、大半の場合「分かったつもり」になっただけ。みんなに対して、分かりやすいようによう説明できたとき、本当に自分も「分かった」と言える。
本書では、「分かりやすさ」に対する、筆者の考えがふんだんに盛り込まれています。

■分かりやすく説明するために

「分かりやすく説明する」ためには、なにが必要でしょうか。
筆者はここで、「思考の歩幅」というものに触れていきます。

「思考の歩幅」とは、足の長さによって「歩幅」が違ってくるように、人の思考にも「歩幅」があるのです。

一人ひとり「思考の歩幅」が違う。ならば、分かりやすく話すためには、その人の思考の歩幅に合った説明をすることが必要になります。ということは、物事の説明の論理展開を、自由自在に細かく分解できなければいけません。この「物事を自由自在に分解できる」状態こそ、本当の「分かった状態」なのです。
「伝える」ことを前提に物事を考えていけば、「分かりやすさ」と同時に深い理解が得られるというわけです。
そんな姿勢で日々、物事を理解している著者の説明が、分かりやすいのも納得です。

「理解すること」の基準

自分に身に付いた力というのは明確な判断基準がないため、測りにくいと思います。本書では、情報を的確に理解することとはどういうことかについて、あらゆる側面から、深い考察を通して書かれています。なので、本書と自分を照らし合わせることで、自分に理解力がついてきたのか、を判断する指標に本書はなり得るのではないかと思います。

最後に、個人的に思うこと

私が一番にオススメしたいのは、要所要所で語られる、「数学を学ぶ意義と大切さ」についての、著者自身の考えです。私も数学教育を志す者の一人ですが、筆者の数学感には、すごく共感するものがあります。

  • 数学という教科は、「数学=数式」というような単純なものではないからです。私は、「数学を学ぶ意義」を"100"とすると、「数式に強くなるため」という面は"5"くらいだと思っています。そして、その残りの"95"は「論理的な思考力を身に付けるため」だと思っています。
  • 数学を勉強することで習得する「数学的思考力」というものは、忘れることはありません。なぜなら、覚えるものではなく"身に付ける"ものだからです。

数学だけでなく、経済などの他の分野でも、その思考力を発揮し、活躍されている著者だからこそ、これらの言葉には説得力があります。
「なぜ数学を勉強するのか」という問いに対する答えのいくつかが、本書には書かれています。


編集後記
本ブログのタイトルは「iPhoneと本と数学となんやかんやと」。今回はタイトルに入っているキーワードのうち、二つのことに触れている内容の記事となるので、すごく力が入ってしまいました。ただでさえ、ブログ記事を書くのにすごく時間がかかるのに、いつも以上に何度も読見返しながら、じっくり仕上げていきました。
自分の好きなことについてあれこれ考え、楽しみながら書くことができたので、長かったですがとてもいい時間を過ごせたと思います。
これからもこんな風に、楽しみながらを大切にして、ポツリポツリと更新していけたらな、とおもいます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。またよろしくお願いします。