数学プロの育成論 - 「数学に感動する頭をつくる」を読んで学んだこと

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「数学に感動する頭」とはなんなのか。そしてそのつくり方とは。1冊を使って丁寧に解説されています。が、そこに甘えは許されません。数学に感動する頭というのはどうやらつくのはなかなか難しいみたいです。

では、本書から学んだことについてスタートです。

「征服派」と「感動派」

受験では、問題を一問でも多く解き、高い点数を上げることを目標とします。解くことに主眼を置くと、”解くための技術力”というのが少なからず必要になり、技術で固めてしまうと「感動」との差異は広がる一方です。一方学校数学のカリキュラムでは、問題を解けるようになることよりも数学の体系の理解を中心に据えています。数学の基礎体系の知識を習得するために、地道に一つ一つ理解を積み重ねていく必要があります。

問題を解き「征服」する受験数学。数学の体系を理解し「感動」する学校数学。その二つの目指すべきところが異なるので、受験を塾や予備校にまかせることになるのでしょう。

また、学校のカリキュラムでまじめに学んだとしても、数の不思議に出会えるのは高校2年生から、と著者は述べています。果たしてそうなのかな、と疑問は残りますが。

■”どちらがいい”というわけではない
受験数学か学校数学か、「征服派」か「感動派」か。これはどちらが良いというわけではないと思います。問題が解けて「やった!」と感じる心や、数の不思議さに触れて「すごぉ!」と思えることはとてもステキなことです。どちらかを感じることができれば、どちらも感じれるならなおのこと”数学”に興味が惹かれると思うのです。数学を嫌う方が多い中、その数学に「やった!」や「すごぉ!」などの何かしらプラスの感情を得ることは、数学嫌いをなくして行く上でとても大切なことでしょう。

面白さ、素晴らしさを知る大人の存在

数学が本来持っている面白さ、素晴らしさに目覚めてもらうには、それを伝える存在が必要不可欠です。
世の中の大人の大半は(数学の教師たちでさえ)数学の面白さ、素晴らしさを生徒に見せて教えることができる人は少ないので、そうした面白さ、素晴らしさを教えることができる教師や親を世の中に増やしていく必要があります。
ぼくは教育学部の数学科に行っていたので、周りには数学教員になった友達が多くいます。でも悲しいかな数学が好きで、その面白さを伝えたい、という意識を持っている方はあまり多くありません。大学に入って数学にかなり挫折しながらもなんとか単位を取得し、数学の教員になったものの方がもしかしたら多いかもしれません。なので面白さ、素晴らしさを教えることができる教師や親を世の中に増やしていく必要というのは痛切に感じますし、大賛成です。自分自身もそんな1人でありたい、その仲間を増やしていきたい。そういう思い出このブログを書いていたりしますが、なかなか数学について書けていない現状をみると、頑張らなければいけませんね。

論理的なものの見方

数学を学ぶ目的の大きな一つとして、論理的思考力を養うこととぼく自身思っています。本書ではそのことについて触れられるのはごく一部なのですが、論理的なものの見方というのはすごく重要な位置を占めています。なのに、「論理的なものの見方」というのは、自分に備わって行っていることを目で見て確認することがとても困難です。
数学を知っていると日常生活に多少便利なこともあるよ、数学的ものの見方は論理的なものの見方で、そうしたものの見方は人生にとっても役に立つよ、というぐらいの意味で、あまり説得力を持ちません。
なのでいくら「論理的なものの見方ができるようになるよ」と言っても説得力がありません。

【数学雑記】「見えない」ことの壁

この”見えない”という壁をなんとか乗り越えなければ。どうにか説得力を持たせなければな、と考える毎日です。

”体力”と”思考力”

体力も思考力も、トレーニングをすれば誰でも鍛えることができるはずです。
スポーツ選手に大切な体力は二十歳から三十歳にかけてがピークだ。同様に思考力も若いうちにピークを迎えるらしく、多くの数学者は若い頃に創造的な業績を作る。
鍛えることができるという点は共通しています。ただ、しっかりと鍛えようと思えば正しくトレーニングする必要があります。例えば体力なんて、ただ鍛えたからと言って全員がプロの選手になれるわけではありません。

思考力も同様で、ただ数学を学ぶことで鍛えたからといってその道で食べていけるようになるとは限りません。

本書では、思考力の正しいトレーニング方法について書かれていると言えます。数学に感動するための思考力を、幼少の頃から養成していく方法が書かれており、つまりは数学における「プロ」を育成する方法論が述べられてると言ってもいいでしょう。

おわりに

数学の楽しみ方、感動するポイントなんて、一人ひとり違っていいと思っています。よにもかくにも楽しいと思ってもらうことが、嫌いな教科No.1の数学には必要ではないのかなと。そうして楽しむことができる、感動することができる方が1人でも増えれば、またそこから周りに、下の世代に広がって行き、少しずつ数学嫌いがなくなれば良いのかなと。

そのためにも、ぼくができることを精一杯やって行きたいと思います。

では、お読みいただきありがとうございました。


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